家紋と表札。ふたつのデザイン。
店のイメージや方向性、目指す世界観を簡潔な図案で表現する、ロゴマーク。
その店の印象を左右する大切なアイテムです。
弊店のことをご存知でいてくださる方は
猫のロゴを思い浮かべるかもしれません。
桃のようなフォルムと猫を組み合わせた弊店のロゴは
日本古来のデザインとも言うべき「家紋」をヒントに作られています。
2万種類以上あるとも言われる家紋。
その中に、うさぎを正面から見た家紋があります。
弊店はそのうさぎの部分を猫に変えました。
この猫は、亭主である私の家に暮らす黒猫がモデル。
我が家の黒猫は「香箱座り」という“伏せ”のような座り方をすると
背中の毛が少しだけモヒカン状に尖ります。
この猫の姿を見たとき、ふと
「どこかで見たことがあるな……」と。
気づいたのが、うさぎの家紋でした。
うさぎもかわいいけれど、
猫に変えてもすてきかもしれない。
そんな遊び心から生まれた家紋は
桃のようなかたちと店名とが重なる部分もあり、
今では弊店の印刷物や商品など
様々な場所で活躍しています。
ちなみに、古くから日本では、
黒猫は福を呼ぶ縁起のいいモチーフとされています。
毛色があんこの色に似ていることから
「あんこ猫」と呼ばれることも。
昔、あんこはお祝いの席などに登場する貴重なもので、
そんなあんこ色をした猫は
幸運を運んできてくれるとされていました。
和菓子をお出しする弊店にとって
あんこ猫とは、ぴったりのアイコンです。
さて、そんな弊店の家紋ロゴとは別に
もう一つ、店名を記した
「表札」のような縦書きロゴがあります。
この店を始めるにあたり、
店名のロゴは非常に重要で
慎重に検討する必要がありました。
そして何より、
長く愛せるデザインにしたい。
ぜひこのデザインをお願いしたいと考えたのが
デザイナーの猿山修さんでした。
猿山さんは私の尊敬するデザイナーですが、
大変人気でお忙しい方。
小さな日本茶カフェのロゴデザインを引き受けてくれるのか。
悩みながらも勇気を出してお願いしたところ、
そんなことは杞憂で、快く受けてくださいました。
猿山さんの、渾身のバランスで書かれたロゴは
弊店の歩みの第一歩とも言うべき、大切なデザインです。
その佇まいは、開店から11年経った今でも
思わずじっくりと眺めたくなる調和と落ち着きがあります。
ぜひ皆さんも、店の引き戸を開ける前に、
立て看板やショーウィンドウのガラスに記された
「ももとせ」
のデザインを楽しんでいただけたらうれしく思います。
そんな猿山さんのデザインですが、
実は店内の別の場所でも見ることができます。
そのお話は、また次回。